【 知っておきたい! 】ブランドマーケティングで重要な「体験」を評価するために役立つ切り口をお教えします。
【記事要約】
企業が商品をリリースする上でとても大事なのが「ブランドマーケティング」、ポジショニングマップやSWOT分析など、マーケティングのフレームワークも数多くあります。しかし、ユーザーのニーズや市場の動きは常に変化しており、マーケティングのフレームワークだけでは把握しきれないことも。
今回はそんな「ブランドマーケティング」について分析手法や事例、独自の調査を交えて紹介しながら、「ブランドマーケティング」を行う上で役に立つ調査の切り口を紹介します。
目次
- 「ブランディング」という意味を今一度考えてみる
- 「ブランドマーケティング」に活用できるフレームワークをまるっと紹介
- ブランドイメージ調査から言えることは?
- 【おまけコンテンツ】ブランドマーケティングをうまく活用している企業
突然ですが、みなさんは「部屋でティッシュが行方不明になる」といった経験はありませんか?
株式会社日本製紙さんが出しているティッシュ、「スコッティ」には、背面に専用のマグネットを装着できる工夫がされており、冷蔵庫などに張り付けられるので、「迷子のティッシュ」を探す手間が省けるんです。私はいつも不便な思いをしていたので助かっています。それ以来、ティッシュといえば「スコッティ」。友だちにも勧めています。
ん?これってブランドマーケティングの参考になるのでは?特に「ティッシュ」という差別化が難しい商品の中でうまくやっているなぁと感じます。
これはもうちょっと掘り下げるとマーケティング的な「ひらめき」が期待できそう。ということで今回は、最近の「ブランドマーケティング」で、活用できそうなコトをワタシなりに考えてみました。
「ブランディング」という意味を今一度考えてみる
そもそもですが、「ブランディング」って何なのかをおさらいします。(もう知ってるよという方はここまでスキップ)
「ブランディング」とは1930年代に、アメリカで始まった企業戦略のひとつで、有名なのがCI(コーポレート・アイデンティティ・Corporate Identity)ですね。日本には1970年代に導入されはじめたと言われています。もう少し分解すると、
MI マインド・アイデンティティ (Mind Identity) 理念の統一
BI ビヘイビア・アイデンティティ(Behavior Identity) 行動の統一
VI ビジュアル・アイデンティティ(Visual Identity) ビジュアルの統一
CIは上記3つの要素から構成されており、MIは「理念の統一」、企業理念として掲げられている部分ですね。BIは行動の統一、「行動指針」として、従業員が目指すべき働き方のことを指し、VIは、企業の象徴となるシンボルマークやロゴタイプといったビジュアル面を統一することで、伝えたいメッセージや自社の特長を明確にしようという考えです。今現在、多くの企業で実践されていることですね。
しかし最近は、インターネットやスマートフォン、SNSの普及で多くの情報が簡単に手に入るようになり、ユーザーの消費行動が大きく変化しました。ネットで容易に比較ができるので、「ブランドチェンジ」もしやすく、悪い印象を与えればそれがSNSで拡散されてしまうことも。
こうしたことから近年の「ブランディング」は、単なる「ロゴ」や「理念」などの構築作業では終わらず、「商品」を通した「ブランド体験」を重視するようになってきました。「CIからブランド体験へ変化している」ということですね。では次に「ブランドマーケティング」でもよく使われるフレームワークをいくつか紹介しましょう。
「ブランドマーケティング」に活用できるフレームワークをまるっと紹介
まずは一般的に使用されている、フレームワークから見ていきましょう。
環境分析
「ブランドマーケティング」を行う上で、「環境分析」を行うことはとても重要。環境分析には内部と外部があり、内部は自社内のことを、外部は自社を取り巻く市場や競合他社のことを指します。具体的に見ていきましょう。
●PEST分析
外部分析で代表的なのが、PEST分析。Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)を意味し、世の中の流れを把握して、自社と関係しているかを分析していきます。手法としてはコチラ。
・Politics 政治的要因
規制など市場のルール (法律、減税、増税など)
・Economy 経済的要因
景気、経済成長(景気、消費動向、為替、株価、金利など)
・Society 社会的要因
ライフスタイルの変化(流行、人口密度、少子化、教育など)
・Technology 技術的要因
IT(インフラ、イノベーション、インターネットなど)
上記の4つの項目にそれぞれ「現状」とこれから起こりそうな「予測」を行い、自社にどのような影響があるのかを考え、外部分析を行います。
●SWOT分析
内外部、両方の分析ができるのがSWOT分析。Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の4つから構成されます。下記図のようにマトリクスにすることで、わかりやすく整理することができます。
内部 | 外部 | |
---|---|---|
プラス面 | 強み | 機会 |
マイナス面 | 弱み | 脅威 |
ポジショニング分析
●STP分析
「環境分析」で自社の内外環境が把握できれば、次はSTP分析です。こちらは競合と比較した自社の立ち位置を把握し、市場の空白部分を明らかにするためのフレームワーク。STP分析は以下3つの段階を踏みます。
市場の細分化をおこない、顧客層をグループ化する
2)ターゲティング
狙うべき顧客を確定させる
3)ポジショニング
自社の立ち位置を選定する
ポジショニングを分析する際は、下記のようにポジショニングマップを作成して、進めていきます。
ポジショニングマップ
フレームワークではないですが、最近はこんな調査も注目されています。
●NPS <ネット・プロモーター・スコア>
NPSとは、顧客がどの程度、自社の商品に信頼や好意を持っているかを測る指標です。
主にアンケート調査などで、「友人や同僚にすすめたいと思うか」を問う手法です。他には、顧客満足度を測るCS調査もありますが、「ブランド・ロイヤルティ」を測る調査として、最近注目されている調査方法です。
NPSは「顧客満足度」ではなく、「ロイヤルティ」を問う調査手法。つまり商品の魅力だけではなく、「ブランド体験」を重視している調査手法といえます。MRCでもこんな調査を行いました。
ブランドイメージ調査から言えることは?
ヨーグルトのフタを開けたら、中身が飛び散ってしまった!ってことありますよね。服についたり、カーペットについたりと・・・でもヨーグルトだけではないんです。調査結果を見ていきましょう。
参照: MRC ブランドイメージに関する調査
こちらは10代から60代の男女、1200名を対象に調査した結果です。「ゼリー製品の開封時に、中のシロップが飛び散った経験をしたことがある」といった問いに対し、「これによって二度とこの商品は使いたくない」(青)が2.2%、「これによってそのブランドの印象が非常に悪くなった」(赤)が5%、「このこと以外が良いだけに、残念な気持ちになった」(緑)17%、「これは気にならないが経験したことがある」(紫)が18.9%、と否定的な回答(以下色で記す)が全体の50%となりました。他にもあります。
参照: MRC ブランドイメージに関する調査
こちらは、「乾麺の使い残しを保存する時に、麺と袋の長さがほぼ同じ場合が多く、使い残しの口をクリップで止められず困ることが多い」という調査に対し、青が0.6%、赤が3.8%、緑が10.3%、紫が21.3%、合計すると全体の35.7%となりました。まだまだありますよ。
参照: MRC ブランドイメージに関する調査
詰め替え用シャンプーについても調査をしました。「入浴時に切れてしまうと、濡れた手で詰め替えるので、ビニールの切り口が開けにくいことが多い」という調査に対し、青が2.3%、赤が4.2%、緑が13.7%、紫が20.2%、合計すると全体の40.4%となりました。
MRCの調査結果から言えることは、企業の見えないところで、ユーザーの「違和感」や「不信感」が生まれている可能性があるということです。もちろん、企業のカスタマーサポートセンターなどに連絡がいく場合もありますが、それってほんの一部じゃないかな。「これによって二度とこの商品は使いたくない」(青)や、「これによってそのブランドの印象が非常に悪くなった」(赤)の割合が一桁というと少なく思うかもしれませんが、仮に利用者が1万人いたとして、その数パーセントは、数百人に、さらにそこからSNSで悪評が拡散したら・・・、なんてことも考えてみた方がいいと思いますよ。
さて、「ブランドマーケティング」で重要なのはCIだけではなく「体験」だというお話をしました。そして、それを「計測」することもまた重要です。そしてそれは、従来のフレームワークや調査だけではキャッチアップするのは難しくなっています。今回ご紹介した「ブランドイメージに関する調査」も参考にしていただき、「満足度」や「ロイヤルティ」に加えて、「ブランド体験」がしっかりと機能しているかどうか、調査してみるのも良いんじゃないでしょうか?インタビューもいいですが、定量的な調査を定点でやるのもオススメです。
【おまけコンテンツ】ブランドマーケティングをうまく活用している企業
最後に「ブランド体験」を重視することで、ブランディングに成功している商品をいくつか紹介します。まずはMRCが調査した、「ヨーグルトのフタについて」の続編です。
こちらは、株式会社明治さんのブルガリアヨーグルト、フタを開ける時にヨーグルトが飛び散っていたことについて、「お客様の声を活かしました」という形で改善されていました。
株式会社 明治
他にも顧客の声から、さまざまな改善をされているようですよ。「フタをより開けやすいように改善」や「ボトルを持ちやすくする」など、様々な「お客様の声」に対応されています。
(参照:株式会社 明治 )
株式会社 日本製紙
こちらは、日本製紙さんの新商品(2017年2月14日時点:未発売)世界初の商品、「SPOPS(スポップス)」。入浴時にシャンプーの詰め替えをすると、濡れた手で行うので上手く開けられなかったり、手が滑って容器からこぼれたりしますが、この「SPOPS」は、詰め替え用のカートリッッジにはめ込むだけで簡単に詰め替えができます。
MRCの調査でもシャンプーの詰め替えについては、「ビニールの口があけにくい」という否定的な回答が出ていたので、「SPOPS」はユーザーの理にかなった商品になっていますね。
(参照:JDN )
ハウス食品株式会社
こちらはハウス食品株式会社さん。カレーのルウが半分残ったとき、「外箱がない為、賞味期限や作り方がわからなくなってしまう」といったお客様の声に対し、外箱をコンパクトに保存できるよう、改善されました。
他にも、レトルト食品などのパッケージに「箱を折り畳みたい」や「箱がつぶしにくい」というお客様の声にこたえて改良されていますね。
(参照:ハウス食品)
明治さんや、ハウス食品さん、日本製紙さんは、いずれも商品を通して、消費者の「ブランド体験」を常に改善し続けているからこそ、支持されるのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございます。今回の調査結果は、無料でダウンロードいただけますので、ぜひ参考にしてください。記事に共感いただけましたら、Facebookのいいね!もぜひお願いします。
更新情報を
WEBプッシュでお届けします。