【緊急レポート】人工知能(AI)で仕事を奪われるって言うけど、クリエイティブ・マーケティング系は大丈夫?
【記事要約】
この記事では「人工知能に奪われるかもしれない仕事」というテーマについて、そのテクノロジーや事例などを振り返りながら、独自のアンケート調査を軸に考察しています。来る人工知能時代にどのような「歩き方」をしていけば良いのでしょうか?ぜひ参考にしてください。
目次:
- そもそもなんで今、人工知能(AI)なの?
- ガン告知に、自動運転に、実用化済みの人工知能まとめ
- 今ある仕事の47%はなくなるってホント?
- ぶっちゃけどう受け止めているのかアンケート調査をしてみた
- クリエイティブ領域にも人工知能が入ってきた!
- 人工知能時代の歩き方
この前、ちょっとビックリなニュースがありました。まず下の動画をどうぞ
リドリー・スコット(「エイリアン」「ブレードランナー」)の息子が監督する新作ホラーサスペンス映画の予告編です。実はこの予告編、人工知能(AI、Artificial Intelligence)がつくったんです。
IBMの「Watson(ワトソン)」という人工知能で、クイズ王に挑戦したり、料理のレシピ本をつくったり、最近は売り出し中の若手タレントのようにいろいろやらされています。
この予告編もワトソンがシーンを選び、編集者(人間)が少し手を加えてつくられ、普通は10日から1カ月かかるところ、24時間でできたとか。
でも、見たところ普通の予告編。新人が突貫作業でつくった感じじゃないですよ。ワトソン本人にわかってるかどうかは別にして、「どういうことで怖がるか」がわかってる感じはします。
映画の内容より、人工知能がクリエイティブ領域に入ってきたことが怖いですねぇ。そもそも記憶力とか計算力とか、全然かなわないですからねぇ。オレ、大丈夫か?? ということで、人工知能について、特に仕事との関係を中心に調べてみました。
そもそもなんで今、人工知能(AI)なの?
以前、日本での人工知能研究の第一人者である松尾豊・東京大学準教授の講演を聞きに行ったことがあります。どうやら今のブームは3回目なんだそうです。初回は1950年代後半にアメリカが中心となって、2回目は1980年代にバブル期の日本が中心となって、人間と同程度の知的マシンをつくろうと夢に燃え、資金も集まりましたが、大した成果は得られませんでした。
しかし今回は、大きな進歩が確実視されています。そのキーワードは「ディープラーニング(深層学習)」。ざっくり言えば、人工知能が自分で学習して賢くなっていくことです。
今までは、賢い人工知能をつくる=賢い専門家の知識をルール化して覚えさせれば賢くなるはず、で研究されてたんですが、手間がかかりすぎて、なかなか進みませんでした。だから今回は、人工知能に膨大なデータを読み込ませ、そこからパターンを抽出し、結果を応用できるようにする機械学習という方法が選ばれました。そのときにデータに事前に特徴を入れたりせず、人工知能に一から識別させるのがディープラーニングです。
インターネットの普及で、世界中から膨大なビッグデータが入手しやすくなったのも、ディープラーニングには追い風です。センサー技術の進化と、スマートフォンの普及で位置情報、温度、加速度などの膨大なデータも簡単に入手可能。人工知能が賢くなるためのデータはよりどりみどりなワケです。
ガン告知に、自動運転に、実用化済みの人工知能まとめ
さらに、ディープラーニングの原理を応用したスゴイ実例を見てみましょう。
●医者に見抜けなかった特殊な難病を10分で診断
東京大学医科学研究所の人工知能が、医師に「急性骨髄性白血病」と診断され、抗がん剤治療したものの容体が悪化していた患者の遺伝子を診断。二次性白血病という特殊な病気だと10分で見抜きました。その結果、無事退院できたそうです。使用されたのは人工知能、「ワトソン」。彼(?)は2000万件以上の研究論文や、1500万件以上の薬の特許情報を学習していて、症状に合う情報を検索し、診断結果とその根拠、治療法まで提示してくれるそうです。
●囲碁のルールすら知らない人工知能が世界最高の棋士に圧勝
2016年3月、Googleが買収したDeepMind(ディープマインド)社開発の人工知能「AlphaGo(アルファ碁)」は、世界最高峰の棋士、韓国のイ・セドル氏と碁盤勝負を行い、4勝1敗で圧勝しました。「囲碁で人工知能が人間に勝つのは10年先」と言われていただけに、衝撃。強さの理由はディープラーニング。アルファ碁は3000万局を超える人工知能同士の対戦で鍛えられているのだとか。
各社が激しく競って開発中の自動運転車。ハンドルもアクセルもブレーキもなく、すべての操作は自社開発の人工知能で制御されます。車の運転は、他の車があり、自転車が歩行者がおり、スリップすることもあれば、前の車が荷物を落とすこともある、など瞬時に膨大な情報を解析し、判断し、動きを操作する必要があります。人工知能にとっても、かなり難易度高い仕事。一番進んでいるのはGoogleだとか。2020年には市販され、公道を走る予定らしいですよ。
今ある仕事の47%はなくなるってホント?
ここまでだと、「ベンリになりそうで良かったね」で終わる話なんですが、「人工知能はコワイ」という声も根強くあります。
まず、「2045年問題」。レイ・カーツワイルという未来学者で人工知能研究の世界的権威が「全人類の知能を合計しても、人工知能にかなわなくなるよ」と発表しました。そのポイントを「シンギュラリティー(特異点)」と呼び、2045年にそれが来ると彼は主張しています。さらに「人工知能を搭載したスーパーコンピューターが地球を支配するよ」とも。
まるで「ターミネーター」のスカイネットですが、今、彼は人工知能研究でもっとも進んだGoogleに加わって「世界を覆う人工知能ネットワーク」の研究を進めておられます。ん? なんか似てませんかね。
シンギュラリティはちょっとSFすぎてピンとこない方には、世界大学ランキングでトップクラスに位置するオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授の話がおすすめ。彼は世の中にある702の職種が今後どれだけ自動化されるかを分析し、『雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか』という論文を発表しました。「今後10~20年でアメリカの総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」という内容です。
なくなると指摘された仕事は、たとえば…
小売店販売員 | 会計士 | 一般事務員 |
セールスマン | 一般秘書 | 飲食カウンター接客係 |
レジ打ち係 | 軽作業員 | 帳簿係 |
大型トラック運転手 | コールセンター案内係 | タクシー運転手 |
上級公務員 | 調理人(料理人補佐) | ビル管理人 |
要するに、仕事をマニュアル化、あるいは知識などが体系的にまとめられて資格制度が運用されてているものは、人工知能+ロボットで代替えできるということ。そのうち、コスト削減効果の大きい仕事から、人工知能+ロボットに置き換わっていくというわけですね。
これはコワイ。
ぶっちゃけどう受け止めているのかアンケート調査をしてみた
さて、どんどん未来に話が飛んでますが、ぶっちゃけワタシみたいなビジネスパーソンのみなさんはどう思っているのか、聞いてみました。MRCで8月23日に発表した「人工知能と仕事に関する調査」から。
●3割の企画・マーケティング職の人が「人工知能に仕事を奪われるのが不安」
実は、「自分の仕事が人工知能に奪われる」と不安に思っているのは、企画・マーケティング職の人が一番多いんですね。これは、世の中に敏感ということでしょうか。しかし医療系の人は余裕ですなぁ。
●半数以上の消費者が「工場などの製造業務は人工知能に置きかわる」と予測
どんな仕事がなくなるか? は、マイケル・オズボーン准教授の予測と同じ。作業は人工知能とロボットに任せる方向で、ということでしょうか。
●6割以上が、「人工知能やAIによって所得の格差が広がる」
人工知能と仕事の関係について、一番多いのは、「暴走が起きないように監視」してほしいという考えです。これはSF映画のイメージも大きいでしょうが、実際にディープラーニングによって人工知能の思考回路はブラックボックスになってしまった感があるので、可能性は・・・どうなんでしょう(笑)。
「人工知能に使われる側にはなりたくない」という声も。サポートしてくれるなら大歓迎、でも命令されるのは嫌。ワタシもそう。
この記事の参考調査レポートを見る
職業別の仕事と人工知能に関する実態調査
クリエイティブ領域にも人工知能が入ってきた!
では逆に、人工知能に置き換えられない仕事はというと、エンジャパンさんが35歳~59歳のサイト利用者に行ったアンケートでは、営業・マーケティング系、経営系、クリエイティブ系、コンサルタント系という交渉や発想が重視される仕事を挙げる人が多いみたい。該当職種の人たちが感じている危機感とのギャップが興味深いですね。
出典:エン・ジャパン「ミドルの転職」
http://corp.en-japan.com/newsrelease/2016/3373.html
専門家の間でも、「クリエイティブ・エコノミー」という表現がよく出てきますが、人工知能は過去は得意だが未来は苦手なはずなので、未来をクリエイトしていくような仕事が人間に残されると言われますね。
なので、冒頭の映画予告編にビックリしワケです。まぁただ、あれは宣伝ネタっぽい感じもありますが。
大手広告代理店、マッキャンエリクソンの例はもう少しリアル。
マッキャンエリクソン http://www.mccann.co.jp/
この人工知能搭載のロボット・クリエイティブディレクターが、過去の名作CMをデータベースに、最適なCM企画をロボットアームで紙に書き出すそうです。制作後はクライアントや上司・同僚、消費者のフィードバックを受けて学習していくとか。
あらら。これって人間のクリエイティブディレクターと同じですよね!?
人工知能時代の歩き方
マッキャンエリクソンの例のように、クリエイターの仕事でも、人工知能に置きかわる部分もあります。他の置きかえにくいとされている職種も同じです。今までは誰もがなれるわけではなかった「専門性が高い仕事」、医師や弁護士などの資格が必要な職種、収入が多かった職種が、資格が体系化、データベース化されることによって、人工知能に置きかわる部分が出てきます。
そのときにどうするのか? いろんな意見があります。
馬車から自動車の時代になっても、馬車の運転手から自動車の運転手に転身できた人もいる、という意見もあります。人工知能とロボットが一般化すれば、それに伴って、新しい仕事がたくさん生まれるという見方も。。
さて、皆さんはどう思いますか?
ちなみに、仕事が無くなったとしても、「ベーシックインカム」という考え方もありますよ。
ベーシックインカム(BI、最低限所得保障)は、年金や生活保護と同じように、政府が全員(もしくは一定以下の収入の人)に定期的に生活費を支給する制度で、働かなくても、仕事を探していなくても、無条件で支給。
2016年6月にはスイスでベーシックインカム導入に向けた国民投票があり、78%という反対多数で否決されました。しかし、オランダ、カナダ、フィンランドなどでも実験が始まるなど、福祉先進国では本気で導入が検討されています。
というようなカンジで、人工知能と仕事というテーマについては今後、我々も継続的に調査していきますので、興味のある方は是非Facebookページをフォローしてくださいね。
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