【 考察 】ポケモンGOに垣間見た「O2Oマーケティング」の真髄とは?
【記事要約】
この記事では話題の「ポケモンGO」での体験をヒントに、ジオフェンシングを活用した「O2O」のあり方について、事例や独自調査などの切り口から考察しています。クーポンドリブンなO2O施策が一定の効果をあげるなか、「今じゃないでしょ」感を抱くユーザーも少なくはありません。態度変容を促す「O2O」施策とは?
目次:
- そもそもO2Oって何だったっけ?
- O2Oはこんなにも進化している
- クーポンドリブンなO2Oは確かに効果あり。
- ジオフェンシングはそれだけでは施策としてはビミョウ
- 「ジオフェンシング」の真髄をポケモンGOに垣間見た。
みなさん、「チラシアプリ」って使ってます? スマホのGPSで位置情報を取得して近くにあるお店のクーポンとかチラシを送ってくれるようになってるんですよ、今。いわゆる「O2O(オーツーオー)」とか「ジオフェンシング」ってヤツですね。
ただ、プッシュ通知が来て見てみると、「今じゃないんだよね」と思うこともしばしば。近くを通っただけで、とくに求めてないものを表示されても、なかなか買おうとは思わない。これってホントに効果あるんでしょうか?
今回はそんな「O2O」や「ジオフェンシング」について事例や調査などを展開しながらいろいろ掘り下げていきます。
さて、まずはO2Oについてのおさらいから。「O2Oの基礎は知ってるよ」、っていう方はMRCオリジナル調査分析のパートまでジャンプを。
そもそもO2Oって何だったっけ?
「O2O(オーツーオー)」とは、「Online to Offline(オンライン・ツー・オフライン)」の略。インターネット(オンライン)から、リアル店舗(オフライン)に誘導したり、逆にリアル店舗や商品から、自社サイトに誘導するマーケティング戦略のこと。小売や外食業界で使われることが多いですな。
簡単に言うと、たとえばこんな感じ。
On to Off例 オンラインのクーポンで、店舗への来店を促す
Off to On例 商品に付いたQRコードで、サイトへのアクセスを促す
2000年頃には「クリック・アンド・モルタル」とも言われていましたね。その頃はパソコンとリアル店舗の連携強化策だったんですけど。
それが、スマホの普及でネットとリアルの境界が薄くなってきて、本格的なO2Oが立ち上がりました。2011年ぐらいから日本でも採用例が増えています。スマホは常にユーザーの手元にあるうえ、GPSで位置情報を取得できるので。リアルに誘導したいO2Oにとって、うってつけなデバイス。
アプリやプッシュ通知など技術の進歩もO2Oに追い風です。
SNSの拡散パワーもO2O向き。モノ消費からコト消費へ、なんてよく言われますが、面白いコトがあると、なんでもないモノが爆発的に売れたりします。
「O2O」の事例といえば、たとえば、伝説的なのはローソンさんの「からあげクン」キャンペーン。
引用:ローソン(LAWSON)facebook公式
※このキャンペーンはすでに終了しています。
2012年4月にローソンさんがFacebookで「からあげクン」半額券を先着30万人に配ったんですが、誰かがクーポンを入手するとFacebook上の友達にも拡散されて、みんな面白がって手に入れ、なんと開始から17時間で配布し終えたとか。しかもクーポンを使って売れた「からあげクン」は6万個以上!ローソンさんが今でも20以上のSNSで公式アカウントを運営しているのも納得です。
最近の流行は、「ジオフェンシング」で、地図上に仮想のフェンスを設定する仕組みのこと。GPS、Wi-Fi、Beacon(Bluetooth Low Energy)などの電波を利用して、ユーザーがこの仮想のフェンスの囲いの内に入ったり出たりしたら、クーポンを表示したり、メールを送ったりできます。
小売の店舗だけではなく、
・美術館で展示物の前に来たら、解説の音声をスマホから流す
・子どもや認知症の方が施設を出てしまったら、管理者に警報メールが送られる
といった利用も。今後はそのまま決済ができる仕組みが実用化されそうで、注目を集めています。
野村総合研究所によると、2013年1月時点でO2Oの市場規模(「インターネットによって喚起されている消費」)は年間で約24兆円。日本のリアル店舗の総消費支出、約120兆円のうち、約2割を占めると推計されています。で、2017年度には50兆円まで伸びるとか。それって自動車業界と同規模。デカっ!
引用:野村総合研究所「O2O市場とO2Oソリューション」(2013年1月)
O2Oはこんなにも進化している
市場規模が拡大しているだけあって、O2O事例は花盛り。面白どころをピックアップしてみました。
●【クーポンドリブン】事例
GU(ジーユー)「シェイククーポン」
引用:GU NEWS
O2Oの王道施策、クーポンによる店舗誘導。GUさんのこのクーポンはキャンペーン参加店舗でアプリを起動してシェイクするだけで、5人に1人が1000円OFFクーポンをもらえるというもの。スマホを振るだけという分かりやすく楽しい仕掛けでクーポン利用率は95%以上!だったとか。
●【ゲーミフィケーション】事例
マピオン×大丸松坂屋「2015日本全国ポイントラリー 秘密(ないしょ)の御触書」
引用:マピオン
ゲームの仕掛け、いわゆる「ゲーミフィケーション」をO2Oに利用したもの。位置情報連動のソーシャルゲームがよく使われます。自分の居場所や移動距離に応じて、ゲーム内で使えるアイテムが手に入る仕組みなので、O2Oにピッタリ。「ケータイ国盗り合戦」ゲームと大丸松坂屋さんが組んだこのキャンペーンは、対象店舗で買い物したレシートとゲーム特典付きカード“くにふだ”を交換できるイベント。2011年から年末商戦シーズンに毎年開催されていて、2014年の同イベントでは売上約6500万円を記録したとか。
●【AR(拡張現実)】事例
トランスコスモス「ハチ公が道案内~渋谷芸術祭ルートガイド」
引用:トランスコスモス
リアルな風景に情報を重ね合わせるAR(Augmented Reality=拡張現実)。ハイ、ポケモンGO・・・じゃないARをご紹介。このO2Oアプリは、公募展、ライブ、映画などのイベントが渋谷駅周辺のいろんな会場で展開される「渋谷芸術祭」専用。3DCGのハチ公がスマホ上で一緒に歩いて各会場まで道案内してくれます。移動中に立ち止まるとハチ公がさまざまなアクションまでしてくれるとか。わかりにくい場所にあるお店や、広い会場の案内などに応用できそうです。
●【ショールーミング】事例
ヨドバシカメラ
引用:ヨドバシ.com
リアル店舗で見てネットショップで買う「ショールーミング」は店舗の悩みの種だと思うんですが、逆にどんどんやってくださいと、店内に無料高速Wi-Fiを用意し、商品のスマホ撮影をOKにしたのがヨドバシカメラさん。
“店舗内でのディスプレイ・商品・イベント等の撮影およびSNS、ブログ等への投稿、他社との価格比較や商品情報の確認、ユーザーレビューの閲覧など商品の比較・検討にお使いください。ショッピングアプリ「ヨドバシ」なら店舗ごとの価格や 在庫状況、取り寄せに必要な時間まで表示されます。”
引用:ヨドバシ.com
商品を撮影してバーコードが入っていると、ヨドバシ.comの該当ページが表示されて、そのまま買える仕組みです。しかし、自由に撮影してSNS投稿もOKというのはいいですね、開放的で明るくて。こういう進化は大歓迎します。
●【Webルーミング】事例
オープンランウェイズ「tabモール」
引用:オープンランウェイズ
ネットで選んで店舗で購入する「Webルーミング」。ネットではサイズがわかりにくいファッション系でぽつぽつ事例があります。この「tabモール」は、120以上のブランドの商品が買えるモールでありながら、Webルーミングを採用しているのがウリ。スマホで商品を選び、東京なら松屋銀座さん、福岡なら小倉井筒屋さん、大阪ならベルメゾン暮らす服・アリオ鳳店さんに取り寄せて、実物を確認、試着してから購入できるサービス。買わなくてもOK、取り寄せ費用は0円という太っ腹設定。
●【Web 誘導】事例
アマゾン「Amazonソムリエ」
引用:Amazonソムリエ
Amazonさんはリアル店舗への誘導ではなく、ネットショップへの誘導施策を始めました。この「Amazon ソムリエ」は、8000銘柄以上を揃えるAmazonワインストア専属の専門家に、電話でワイン選びの相談ができる無料サービス。シチュエーション・合わせる料理・ギフトなら送り先などを電話で話すと、後ほどオススメ商品を書いたメールが送られてきて、ほしい商品があればAmazonネットショップで購入、というスタイル。電話中に買わなくてもいいので、リアル店舗よりプレッシャーないかも。
と、どんどん面白い事例が出てくるO2O。注目の新しい流れだけに、MRCでもいくつか調査をしています。
クーポンドリブンなO2Oは確かに効果あり。
O2Oマーケティングを消費者がアプリでどう使っているのか、調べてみました。
参照:参考調査 飲食店や小売店の公式アプリと消費行動(2015.06.12)
公式アプリ利用後に、3人に1人が「来店や購入頻度が増加」と回答しています。その企業やブランドの「情報を積極的に仕入れるようになった」り、「SNSで拡散することが増えた」りと、アプリによってファン化する傾向が出ていますね。
参照:参考調査 飲食店や小売店の公式アプリと消費行動(2015.06.12)
企業公式アプリの使用目的、つまり来店や購入頻度を増やすのは、1位「クーポン」、2位「ポイント」、3位「キャンペーン」。クーポンは7割以上とダントツです。この数字は性別、年齢層問わず同じような数字になっています。
参照:参考調査 飲食店や小売店の公式アプリと消費行動(2015.06.12)
店内で公式アプリを知り、その場でインストールした人の42.2%は「クーポン目的」。20.5%が「初回割引サービス利用」。クーポン、割引、おトク、ポイントといったキーワードが効果的なワケですね。
参照:参考調査 飲食店や小売店の公式アプリと消費行動(2015.06.12)
公式アプリユーザーの3割超が、「クーポン適用期間まで、来店を延期したことがある」とか。「単品から、クーポン対象のセットに変更したことがある」「クーポン対象商品に切り替えたことがある」人が多いなど、クーポン強し!
結論、クーポンドリブンはきっちり効果ありそう。
ジオフェンシングはそれだけでは施策としてはビミョウ
続いて、MRC「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査」でジオフェンシングについて聞いています。
参照:参考調査 モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2016年10月度)(2016.11.02)
現在、「位置情報連動型アプリを利用中」の人は3割を超えます。10代、20代の男性だと利用者は4割を超えますね。ゲームで位置情報に馴染みがあるからでしょうか。逆に女性は年齢層に関わりなく利用中の人が少なめ。
参照:参考調査 モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2016年10月度)(2016.11.02)
位置情報を元にクーポンを表示されても「本来の目的はなかなか変えない」人が48.2%という結果に。ほしいものでなければいらない、安いからといって買わない、という意志を感じます。
参照:参考調査 モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2016年10月度)(2016.11.02)
「位置情報連動型アプリ」からどんな情報が届いたら、元々の用事や目的を変更してでもその店に行くのか? 「よく行く店の好きなジャンルの商品の割引情報」「残り少なくなった日用品の割引情報」「カートにいれて買うかどうか迷っていた商品の割引情報」がトップ3。結局、「自分がほしいもの」や「タイミング」を考えて欲しい、ってことですね。これ大事。
「ジオフェンシング」の真髄をポケモンGOに垣間見た。
さて、ここまで見てきたように「ジオフェンシング」を活用した「O2O」にはさまざまなカタチがあり、クーポンドリブンな施策は一定の効果はありそうです。一方で調査からわかるように「今じゃないでショ」的な感覚はユーザーも抱いている。当然、セグメントや配信タイミングを考えるべき。いや、マーケティング担当はもう考えている。
でもそれだけじゃ足りないんだよな。と思っていたらついに見つけました。
「ジオフェンシング」の真髄。
はい。ここで「ポケモンGO」。ブームは過ぎたって? うん、ワタシも若干熱意が低下気味。だけど聞いてください。この前、仕事帰りに定食屋で天ぷらを食べながら久しぶりにアプリを開いたら、なんと「カイリュー」の影が!
引用:ポケモンだいすきクラブ
その影を見た瞬間、ワタシは事件発生を知った新米刑事かなんかのように、慌ててエビ天をノドに詰め込みながら、取っておいたししとうの天ぷらはあきらめて、人が集まっている場所に向かいました。で、ふと、「あれ? 今オレの中の目的が、天ぷら→ポケモンに変わったよな」と頭の中の電球が光りました。
つまり、本来の目的である「天ぷら」をはるかに凌駕する「カイリュー」の出現によって「ユーザーの目的ごと消費行動が変わる」。まさに「ポケGO」はこれを鮮やかにやってのけたワケです。
これこそがマーケティング担当が求めてやまない、究極のジオフェンシング、究極のO2Oなのではないでしょうか?
みなさんのビジネスにおける「カイリュー」は何でしょう?
それを「調査」でひもといてみるのもいいかもしれないですね。
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参考調査:
【O2O】クーポンが消費を促す!「飲食店や小売店の公式アプリ」利用調査
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