【 新戦略 】Facebook広告のBtoBマーケティングにおける”テッパン”は、「チャットボット」×「メッセンジャー広告」
【記事要約】
2016年11月に発表されたFacebookの新たな広告、「Messenger広告」。今回の記事ではその「Messenger広告」の活用について、最新事例や調査をもとに考察しています。すでに日本では「LINE」が巨大なメッセンジャー・アプリ・プラットフォームとして君臨しています。はたして、Facebookのメッセンジャー広告はその牙城を崩すことができるのでしょうか?
目次:
- そもそもFacebook広告とは?
- 新登場、Messenger(メッセンジャー)広告とは?事例も紹介。
- MRC調査から考えるFacebook Messenger広告の活用
- Messenger広告で攻めるべき市場とは?
- Messenger活用を加速するのは○○○?
2016年11月にFacebookがいよいよMessenger(メッセンジャー)上での広告利用を一般企業に公開した、というニュースが発表されました。
●Facebook開発者ニュース(英語)
●TechCrunch「Facebook、Messenger最新版で広告メッセージの利用を一般企業に公開」
引用:TechCrunch「Facebook、Messenger最新版で広告メッセージの利用を一般企業に公開」
Facebookによれば、今日のアップデートで発表されたMessenger v1.3では、「スポンサー・メッセージ」が利用可能になるという。ほとんどすべてのFacebook広告主はMessengerプラットフォームを通じてユーザーに広告メッセージを送信できるようになる。
イメージはこんな感じ。
引用:Facebook開発者ニュース
これだけ見ても、なんのことやらわからないかもしれないですね。
つまり、もう既にバリバリ運用されているFacebook広告とは違って、登録した人と1対1のようにやりとりできるMessenger(Facebookのメッセンジャー・アプリ)を通して広告を送れますよ、という話。その広告から買い物ができたりと、なかなか使えそうではありますが、英語だしわかりにくいですね。
引用:Facebook開発者ニュース
まぁぶっちゃけ簡単に言えば、企業のLINEアカウントみたいなもんですね。うーん。そうなんですよねぇ。確かに今までのFacebook広告にはなかった新しいサービスですが、わざわざFacebookのメッセンジャー広告じゃなくても、日本には既にLINEという巨大なメッセンジャー・アプリ・プラットフォームがあって、相変わらずたいへんな人気なんですよねぇ。
MRCの月例調査の結果を見ても、LINEの利用率は全体で64%。10代女性は94%、20代女性は90%。マーケティング戦略の重要な位置を占めるF1層をガッチリ押さえています。しかも、40代でも6割を超え、幅広い年齢層から支持されていることがわかります。
参照:参考調査 モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2016年10月度)(2016.11.2)
しかも、「昔は使っていたが、今は使っていない」という、卒業率っていうんでしょうか、それが全体で1.8%と、非常に非常に低いのが特徴です。たくさんの人がしっかり継続利用しているということです。この数字はスゴイ。
だって、Facebookの卒業率は10倍近いですからね。
利用者も、全体で39%、10代女性で14%と、かなりの差があります。
参照:参考調査 モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2016年10月度)(2016.11.2)
LINEは既に「LINE@」や「公式アカウント」でプロモーション手段を提供していて、バリバリ利用されてます。
FacebookのMessenger広告、勝ち目があるのか???
ということで、今回はFacebook広告&Messenger広告をどう活用するといいのか、その秘策を考えてみました。
この記事の参考調査レポートを見る
「SNSプロモーション活用実態調査2016」
そもそもFacebook広告とは?
まず、Facebook広告について、ざっくり見ていきます。
●Facebookのユーザー数(MAU)
国内2600万人/世界17億1000万人
※MAU数値は、Facebookの中の人のインタビューより引用
Facebook開発者ニュース
メディアの規模を表す、MAU(月に1回以上サービスを利用した人の割合)は、世界では人口の4分の1近い圧倒的な数字ですが、国内では2600万人。LINEは6400万人なので、差がありますね。
●Facebook広告の仕様
この赤枠で囲んだところがFacebook広告部分です。ニュースフィード上に流れてくる広告と、パソコンのデスクトップ表示の場合は右側のカラム部分に固定表示される広告があります。
<Facebook広告の基本仕様>
フォーマット : 写真・動画+テキスト
CVタイプ : サイトアクセス(外部サイトも可)、アプリインストール、アプリ使用など
予算設定 : 1日もしくは期間中の支払上限予算を設定
課金方式 : CPM課金(1000回表示毎)、クリック課金、CPI課金(アプリDL毎)
セグメント・ターゲティング方法 : 地域・年齢・言語など詳細に設定可能(後述)
入稿方法 : 広告マネジャー上で写真や動画とテキストを入力
Facebook広告というと、Facebookの自社投稿にリンクするものというイメージがありますが、外部サイトへのリンクも可能です。自社サイト、ランディングページ、App StoreやGoogle Playストアに誘導することができます。
<Facebook広告の特長>
Facebook広告の特長は、なんといってもセグメントがきっちりできること。広告表示対象となるオーディエンス(ターゲット)を設定できるのですが、実名詳細設定のSNSだけに、細かい細かい。
地域、年齢(1歳刻み)、性別、言語といった属性情報から、学歴、収入、住宅、子どもの有無、働く業界や職種、趣味、使用デバイス(スマホのOS)などなど、書ききれないぐらい様々な項目でターゲット設定できます。
ビジネスパーソンの利用が多いSNSだけに、BtoBでも充分使えます。たとえば、「東京に住む、年収1000万円以上のマーケティング系の経営者」のような設定ができるわけです。細かすぎると右上のレベルゲージで「狭すぎます」と出てきます。
引用:Facebook
そして、Facebook広告運用経験から言うと、「つながり配信」ができるのがイイんです。たまに流れてくる「○○さんがいいね!と言っています」というアレ。自社のFacebookページに「いいね!」してくれた人の友達に配信できるんです。好みや職種が似ている人が多いだろうし、これはマーケティング担当としてはありがたい機能です。
<Facebook広告の成功事例>
Facebook広告で効果を上げた事例も数多く出ています。Facebookの事例紹介ページから、BtoBの成功例をいくつか挙げてみます。
引用:Facebook広告の成功事例
●freee/コストは半分、効果は2.5倍に!
引用:「freee」公式Facebookページ
中小企業や個人事業主を対象としたクラウド会計ソフト「freee(フリー)」。自社サイトを閲覧したが無料会員登録をしなかった人や、既存ユーザーに似たプロフィールの人をターゲットに広告配信。CVR(コンバージョン率)は広告全体の2.5倍、モバイルアプリインストール広告のCPIは他媒体の半分という大きな成果。
●楽天スマートペイ/リード獲得広告で費用は4分の1、獲得率は47%アップ
引用:「楽天スマートペイ」公式Facebookページ
小規模店舗やタブレット、スマホでクレジットカード決済ができるようになる「楽天スマートペイ」。リンク広告に加えて、資料請求フォームなどが使えるリード(見込客)獲得広告を導入。モバイルニュースフィードのみの表示で、30~50代の日本在住の経営者をターゲットとして展開し、リード獲得単価は通常のDSP広告と比較して47%改善、CVRはキャンペーン前より47%増という大きな成果。
新登場、Messenger(メッセンジャー)広告とは?事例も紹介。
そんなFacebook広告に2016年11月8日、メッセンジャー広告が加わりました。冒頭でも少し触れましたが、メッセンジャー・アプリを通じて、広告メッセージを個人に送る機能です。
<メッセンジャー広告の基本仕様>
フォーマット : テキスト、写真、ボタン
課金方式 : in-box表示課金(クリックされなくても課金)
配信対象 : 1度でもメッセージをやりとりしたユーザーに対してのみ配信可能
引用:「facebook for developer」Messengerプラットフォーム
メッセンジャーのMAUはなんと世界で10億人!(2016年7月発表) その巨大サービスの新企画ということで、メッセンジャー広告は注目を集めていますが、まだ国内ではこれからですね。
海外では、2015年からアメリカで数社がテスト的に導入していたとか。
フェイスブックは昨年、ウーバーの配車をメッセンジャー経由で依頼可能にし、先日はKLMオランダ航空と提携し、搭乗券の受け取りにメッセンジャーを利用可能にした。既に二十数社がビジネスアカウントを設けている
引用:「Forbes Japan」フェイスブック「ビジネスアカウント」開放へ 本日F8で発表(2016.04.12)
たとえば、自動車配車サービスのUber(ウーバー)はこんな広告をメッセンジャーに配信したとか。
Sponsored @facebook messages from @Uber …Wait is this now a sponsored tweet? #TooMetaForMe pic.twitter.com/q2zzKJQSFi
— Michael Lin (@linmichaelj) 2016年4月1日
普通の広告メッセージっぽいですね。これはダメそうなニオイがプンプンします。
ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルのテストも惨敗だった模様。
シカゴのマリオット系列ホテル「コートヤード(Courtyard)」の部屋をオンラインで閲覧していた顧客には、まだ部屋を予約したいかどうかを尋ねるパーソナルメッセージを送りつけていたという。
マリオットの常連客は、これに対して否定的な反応を示す。そのため、この試みはわずか2時間のうちに終わりを迎えた。
「我々の初の試みは無惨にも失敗した」と、マリオットのソーシャル・デジタルマーケティング部門でシニアディレクターを務めるアマンダ・ムーア氏は振り返る。
引用:「DIGIDAY」「Messenger」施策の失敗、マリオットホテルが学んだこと(2016.10.28)
まぁ見切り発車して失敗からPDCAを回していくのはアメリカ企業の真骨頂なので、これから、こういった失敗の数々を糧に、だんだん効果の上がる使い方ができあがっていきそうです。
さて、ここから本題の「FacebookのMessenger広告はLINEに勝ち目があるのか?」という核心にはいります。
MRC調査から考えるFacebook Messenger広告の活用
企業としてのFacebookのニュースはさまざまなサービスの導入から創業者のプライベートまでいろいろ目にしますが、逆にユーザーの「Facebook離れ」もよくメディアの話題になっています。「リア充アピールを見るのがキツイ」とか。実際のところどうなのか、MRCの調査で見てみます。
参照:参考調査 モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2016年7月度)
たしかにLINE(青線)やInstagram(インスタ、黄)は伸びています。ただ、Facebookの利用率が「下がっている」ワケではありません。10代は下がっていますが、LINEもTwitterのほうが下落率は高くなっています。
しかも、利用者が急増しているインスタの親会社はFacebookです。若年女性はインスタで取り込み、Facebookでは力点は置かない、という戦略を取っているんでしょうかね。
力点を置いているのは、ビジネスユース、ビジネスパーソンなんでしょうかね。MRCでのユーザー調査でも、それが伺えます。会社や取引先の知り合い(12.8%)、昔の同級生(30.1%)といった、オフィシャルな、くだけていない関係性の相手との交流に使うと。なるほど。
参照:参考調査 モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2016年10月度)(2016.11.2)
さらにさらに、「ビジネス上の取引先や顧客」とのコミュニケーションについて、30代~40代ではFacebookは他のSNSよりも利用率が高くなっています。
全体(全年齢層)では、Facebook:LINE=12.8%:18.3%ですが、30代だと28.6%:9.5%、40代だと25.0%:10.0%と逆転します。
参照:参考調査 モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2016年10月度)(2016.11.2)
たとえば30代、40代というと、一般的には企業の意思決定に影響をあたえる「インフルエンサー」とも考えられます。この層を押さえているということは、ビジネスユースを押さえているというがいえるんじゃないでしょうか。
MRCのマーケターに聞いた調査でも、今後活用したいSNSの1位はやはりFacebookが21.7%です。
参照:参考調査 マーケティング担当に聞く!「SNSプロモーション活用実態調査2016」 (2016.03.11)
企業における「プロモーション活用」という視点ではFacebookの利用率は高く、まだまだ主役の座は譲っていないようです。
Messenger広告で攻めるべき市場とは?
Facebookは「ビジネスユース」に強い。メッセンジャー広告も、「BtoB」領域においては、かなりの威力を発揮するはず。ただ、SNSは通常のサイトとは違い、ビジネスユースでありビジネスパーソンが見るサイトでもあります。
通常の「Business to Business」に加えて、「Business to Business person」という、ビジネスパーソンを対象にしたビジネスでも効果が得られそうです。
たとえば、
転職・人材紹介/自己啓発セミナー/資格・英会話スクール/ビジネススーツ、バッグ/飲食店検索サービス/ビジネスホテル・・・
これらを扱う企業のマーケティング担当は、Facebookページを作成し、今すぐ「ユーザーネーム」を取得しましょう。Facebookには既に、Messengerを広げるための仕組みが用意されつつあります。
参照:FacebookとMessengerで、ビジネスがもっとみつかりやすく
ユーザーネーム表示でビジネスが見つかりやすく
近々Facebookページのタイトル直下にユーザーネームが表示されるようになります。@マーク付きで表示されるユーザーネームは、Facebookページごとに固有の情報で、似たような名前のビジネスが存在しても重複することはないため、FacebookやMessengerでビジネスを検索、判別しやすくなります。
ユーザーネームは「早い者勝ち」らしいですよ。
とはいえ、このMessenger広告の仕組みをフル活用するにはもうひと工夫いりそうです。
Messenger活用を加速するのは○○○?
ただ、メッセンジャー広告には大きな課題が・・・。Facebookページのファンだからといって、メッセンジャーですぐに広告メッセージが送れるワケではじゃないんです。相手が自ら企業のMessengerスレッドに参加する、つまり相手から一度メッセージを送ってもらわないといけないんです。そこがFacebook広告との大きな違い。
・・・結構ハードルが高くね?
LINEは無料スタンプをダウンロードする代わりに企業メッセージの許諾をするパターンが多いですね。
Facebookの場合、企業のメッセンジャーに入って許諾をもらうためにFacebook広告を使うパターンが多くなりそうですが、いかにもCVRは低そう。
実はもっといい「手法」があります。それが、「Facebook Bot」。メッセージを送りたくなるような「チャットボット」をつくって、メッセージを送ってもらう。そうするとメッセンジャー広告の配信が可能になるというワケ。事実、FacebookはこのMessenger広告の発表の数ヶ月前にチャットボットのAPIを公開しています。
チャットボットとは、ユーザーから送られてくる質問や要望などに対して、自動で適切なメッセージを返すプログラムのことで、LINEだと面白会話ができるAI女子高生「りんな」が有名ですね。
Facebookではビジネスパーソン向けの、もう少し実用的なチャットボットが多いですが、日本でも既に活用している企業があります。いくつか紹介しましょう。
参照:「Qiita」日本国内のFacebookボットまとめ
●「Wantedlyボット」自然な文章で仕事相談できるボット
引用:Wantedly求人広告より Wantedlyボットをガシガシ改善していきたい言語処理経験者ウォンテッド
求人情報サイト「Wantedly(ウォンテッドリー)」が、AI(人工知能)を使って、求人情報を紹介するチャットボット。無機質ではない自然文で検索ができ、対話形式で条件を追加して、イメージする仕事を探せるツールです。「表参道でファッション系のショップで働きたい」でお勧めされた求人を見て、「正社員がいい」「渋谷でもいいから、もっとないの?」といった対話ができます。通常検索よりは気軽で、画面が小さいスマホ向きですね。
●「お部屋探しBOT ヘヤジイ」対話形式でお部屋探しできるボット
引用:ヘヤジイ ランディングページ
賃貸物件紹介のポータルサイト「ヘヤジイ」のお部屋探しボット。希望の条件を入力すると、お部屋探しの達人「ヘヤジン」が、「これはどうじゃ」とお勧めしてくれます。前の引っ越しのときに、Messengerではなかったですが、お世話になりました。通常の、検索条件を何ページにもわたってチェックして、チェックボックスにマークして、というのが面倒だったので、必要な条件だけを1文で入れられ、追加で条件をつけたり減らしたりできるのは便利でした。
●症状を選べば可能性の高い病気がわかる「症状チェッカーbot」
引用:「MEDLEYオフィシャルブログ」
「症状チェッカー」、「症状チェッカーbot」をリリースしました(2016.06.02)
オフィスや出先で体調を崩したら、役に立ちそうなボット。「医師の脳内をソフトウェア化」がウリで、医師の監修のもとに、簡易診断してくれます。医者に行くほどじゃなさそうだけど不安、ということは多いので、ニーズがありそうです。開発・運営する株式会社メドレーは医療・介護関連の人材派遣やメディア企業で、このボットは収益を上げるというよりサービスや社会貢献のようです。
他にも、カスタマーサポート、Eコマース、ホテルや交通機関の予約など、「チャットボット」はかなり幅広く活用されています。
いかがでしたでしょうか?ビジネスユースに強いFacebook。ユーザーにダイレクトにリーチできるMessenger広告は使い方次第で、アナタのビジネスを加速させられるかもしれないですね。そして、その「呼び水」となるのは「チャットボット」。さぁビジネスパーソンをターゲットにしたビジネスを展開しているみなさん、善は急げ、ですよ。
今回のコラムに登場した調査を含め、MRCの各種調査報告書は、下記からダウンロードできます。記事に共感いただけましたらシェアやFacebookページのいいね!もぜひ。
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