おすすめマーケティング記事 おすすめ 2016.12.06

リサーチデータをアウトプットして得られた成果とは?スマホ黎明期からモバイル専門のオウンドメディアを運営するMMD研究所が実践したコンテンツマーケティング

2016年はモバイル・スマートフォンにとって激動の1年だったのではないでしょうか。「2年縛り」や「実質0円」、そしてキャリアのオリジナルスマートフォン。国がガイドラインを定める、というのはモバイル端末が消費者のライフスタイルに欠かせない存在になったことの証明であると思います。
 
今回は、そんなスマートフォンの黎明期から、いち早くデータ提供を行い、今や日本最大のモバイル専門調査機関となった「MMD研究所」の吉本社長に、オウンドメディアの運営と、今行っている新たな取り組みについて、お話をうかがいました。
 

編集部:まず、貴社の取り組みと吉本さんのことについて教えていただけますか。

 
MMD研究所は2006年の9月に公開しました。アメリカで初代iPhoneが発売される1年前ですので、i-modeを中心としたガラケーからスマートフォン時代に突入していくタイミングですね。MMD研究所は、アップデイトというモバイルのメディアレップの新規プロジェクトとして発足しました。モバイル広告を取り扱ううえで、モバイルに関連する消費者動向を自分たちでも調べていこうと。それからちょうど10年になりますね。当初は取引のあるメディア会社の協力を仰いで、モバイルユーザーにアンケートを取得させていただいて、そのデータをサイトに公開していました。当時、モバイルに特化したデータを発表している会社は本当に少なかったです。
 
 

編集部:スマートフォン時代の1年前にMMD研究所は産声をあげたワケですね。今のようなスタイルになったのには何かターニングポイントはあったのでしょうか。

 
interview

MMD研究所 所長 吉本 浩司氏

 
MMD研究所をスタートした後にスマートフォンが盛り上がったということもあり、おかげさまで業界の方々を中心に会員数は1万人ほどにふくれあがりました。私は2010年頃にMMD研究所を担当することになり、これからどうやって発展させていこうかと様々な情報を調べていると、「インバウンドマーケティング」とか「コンテンツマーケティング」という言葉を知りました。ターゲットに情報を届けるプッシュ型の時代から、検索やSNSの発達でターゲットが情報を能動的に探しているプル型の時代に変化していていることを知り、「いかに興味を持ってもらうコンテンツを用意するか」や、「継続的な関心を高めるコンテンツを作り出す」といった潜在顧客へのリードマーケティングを知ることができました。
 
ちょうど私が担当するタイミングで会社としてスピンオフする計画があったので、あらためて「我々の顧客は誰なのか」、「その顧客が求めている・知りたいことは何なのか」、「その知りたいことを提供するコンテンツは何なのか」、「知ってもらった後にビジネスに繋がるコンテンツは何が必要なのか」を模索していく日々が続きました。
 
 
interview2
 

編集部:模索する中で初期に力をいれて取り組まれたことは何ですか?

 
私たちのWebサイトはBtoB向けで、それもモバイルに特化しているので、必要とする人は限られる情報サイトなわけです。そんな中でどうやったら必要とする人にコンテンツを届けられるのかなというのは苦労しました。
 
「モバイル」に関する検索で上位表示されればよいのですが、コンテンツを量産するリソースもほとんどありませんし、リスティング広告を出すお金もありません。我々ができることはモバイルユーザーを調査することですが、そのデータを届ける手段がありませんでした。その時にコンテンツマーケティングで知った“ターゲットが能動的に情報を探しにくる場所で見つけてもらう”ことを思い出し、業界動向や最新情報が乗っているニュースメディアにデータを提供することに力を入れました。メディアが発信する最新の業界動向を業界関係者はチェックすることから、メディアの編集部の方や記者、ライターの方へ積極的に「どんな情報を欲していますか?」「これから注目される分野は何ですか?」とひたすら聞きに動くことでMMD研究所のデータも徐々に取り上げていただき、メディアを通じてモバイル業界の方に知っていただく機会が増えてきました。
 
少しずつ手応えも出てきた2013年頃に「国内で最もモバイルに関するデータを発表する調査機関」という目標を掲げ、調査の数も増やしていきました。
そしてコンテンツマーケティングを本格的に取り組むために2014年にサイトをフルリニューアルしました。
 
 

編集部:どのようなリニューアルをしたのですか?

 
私がコンテンツマーケティングを知った時に最も重要と感じたのは「ターゲットとなる潜在顧客がどのような事柄に関心・興味があるかを把握し、コンテンツを用意すること」です。それまでは調査データをコンテンツ化して、それをメディアに発信し、サイトに掲載することはしていましたが、調査データを見に来ていただいた人や調査レポートをダウンロードした人を分析していませんでした。リードマーケティングしている企業にとっては当たり前過ぎることかもしれませんが、当時は情報を作って届けることで頭がいっぱいでリサーチ・分析を本業としているにも関わらず、自社の調査データを利用してくれている人を分析することができていませんでした。
 
そこでリニューアルする際にフロント側も変えましたが、一番こだわったのはバックエンド側のシステムでした。どうしても実装したい機能があったので独自CMSで組み上げました。仕組みはMA(マーケティングオートメーション)に近いのですが、当社が何百と発表した調査データをジャンルごとに分け、誰がいつどんな情報に接触しているかを確認できるようにしました。そうすることで〇〇会社の〇〇部門の部長さんはAという関連調査データを良くダウンロードしながらB、Cのデータにも関心を持っているというようなことが把握できるようになりました。
 
調査データを見に来る人が何に関心があるかが分かったことで、本格的な編集組織をつくり、調査データ以外に関連コラムやインタビュー記事、業界セミナーなど独自コンテンツを増やし、モバイル業界の専門性を高める取り組みをしました。
 
“モバイルの情報を欲する人が関心をもつコンテンツを作る”
私なりに2010年に知った「コンテンツマーケティング」を試行錯誤することで、モバイルに関心のある1万8千社(5万5千人)の方が会員登録をしてくれるサイトになりました。
 
 

編集部:なるほど、コンテンツを通じて自社を知ってもらうために、表現の幅を広げたと言うことですね。直近やられた何か新しい取り組みなどはありますか?

 
2つあります。1つは今年から始めたことで調査データを分かりやすく表現する「インフォグラフィック」「ホワイトペーパー」のアウトプットです。
 
調査データは主に数値やグラフとしてアウトプットします。内容は当社の思考が入るよりファクトを整理して発表するスタイルをとっています。それはそれで有益な結果ですが、どうしても関心のある方しか見てくれません。海外の調査会社のレポートは写真やピクトグラムを使って非常に分かりやすいデータやレポートの発表をしています。もっと直観的に分かりやすい見せ方や、業界背景やデータ分析から分かったことなどを深く伝えるコンテンツ作りにトライしています。日本でも優れたレポートを出している企業も増えていて、調査データをよりわかりやすい表現でコンテンツ化する傾向になると感じています。
 
インフォグラフィックで見るスマートフォンカメラの今
 
参照:インフォグラフィックで見るスマートフォンカメラの今(2016.7)
 

編集部:インフォグラフィックスは企画や設計などのディレクションがとても難しいという印象ですが、何かコンテンツの作り方で工夫されていることなどはありますか。

 
インフォグラフィックスを作成するときには「データをそぎ落とす」ことをやっています。わかりやすくインパクトがあるだけに、発表する要素を削らないと、かえってわかりにくい表現にもなってしまうと感じています。自分たちが本当に言いたいことは何なのかを見極めるために、データと向き合うことに時間をかけています。
 
また、アンケート以外の調査にも適していると思います。最近ではインテルセキュリティさんと「高校生のスマートフォン利用に関する調査」を発表したのですが、その一環で「高校生のスマホファースト画面」というインフォグラフィックスを作成しました。これはスマホの「ホーム画面」キャプチャを100名ぐらいの高校生に送ってもらい、それをベースに調査したものですが、テキストでそれを表現してもわかりにくいため、スマホの画面そのものをインフォグラフィックスで表現しています。
 
インフォグラフィックで見る今どき高校生のスマホホーム画面実態調査
 
参照:インフォグラフィックで見る今どき高校生のスマホホーム画面実態調査(2016.7)
 
 

編集部:今もう1つ取り組んでいることは何ですか?

 
当社が取り組んでいるコンテンツマーケティングをお客さまと一緒に取り組んでいくことです。当社はマーケティングリサーチの提供が事業の中心ですが、リサーチデータをインフォグラフィック化するお手伝いやMMD研究所のようなオウンドメディアを構築したり、運営ノウハウの提供やコンテンツ制作も増えてきています。
 
オウンドメディアやコンテンツマーケティングに取り組む企業やサービスを提供する企業が増えてきていますが、MMD研究所が取り組んでいるコンテンツ施策は他社の内容と違う視点が多いので、我々が当時感じていたような課題をお持ちの企業にはノウハウをそのまま提供できると感じています。
 
この辺りは12月20日に御社と開催するコンテンツマーケティングセミナーでお伝えできればと思います。はい、宣伝です(笑)
 
 

編集部:最後に、これは今回のインタビューから毎回皆さんに聞くことにしているのですが、吉本さんにとって「調査」とは?

 
interview3
 
なかなか難しい質問ですね。あまり偉そうなことはいえないですが、リサーチを実施する企業やビッグデータなどデータに向き合う企業は非常に多いと思います。ただ、調査をコンテンツとして捉え、発信する企業はまだまだ少ないと思います。調査を設計して、集計し、分析して、コンテンツとしてアウトプットするプロセスそのものが、データに向き合い考える組織作りになると思います。リサーチ部門やマーケティング部門の人だけでなく、営業部門や人事部門の人にもデータに向き合いアウトプットすることで顧客獲得や採用など成果に繋がると思います。
 

 
編集後記:
「コンテンツマーケティング」は素晴らしい考え方であると同時に、「ユーザーに有益な情報を提供する」という軸がブレないようにしなければいけない。10年という長い間、ひたすらにそれに向かい続けた吉本さんのお話は同じくオウンドメディアを運用する私自身にとって、とても有益であると同時に今後のコンテンツ運営について改めて考えさせられるものだった。

マーケティング・リサーチ・キャンプではマーケティング担当の方にとって有益な情報を調査レポートとして提供しています。「コンテンツマーケティング」についても調査レポートを提供していますので、こちらもぜひ参考にしてください。

関連調査:マーケッターに聞く!コンテンツマーケティング実態調査

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