おすすめマーケティング記事 おすすめ 2017.04.10

日本ハムの「BBQ GO!」はなぜ日本一のBBQメディアになったのか?「効果」に対する考え方が教えてくれた「オウンドメディア成功のヒント」

コーポレートサイトとは別に、独立した複数の「オウンドメディア」を持つ企業も、最近ではよく目にするようになった。企業の一方的な情報発信ではなく、消費者が興味関心を持つコンテンツを配信し、継続的なコミュニケーションを行うことでブランドを構築していく、というもはや定石ともいえるマーケティング手法だが、はたして効果を実感している企業はどれくらいいるだろうか?今回、日本一のBBQメディア「BBQ GO!」を運営している、日本ハム株式会社の藤本氏に「オウンドメディアが誕生するまで」の話をうかがうことで、「効果を得るため」の新たな知見を得ることができた

 

編集部:まずは簡単に御社のご紹介と、藤本様のご紹介をお願いします。

 

日本ハムといえば「北海道日本ハムファイターズ」や「ハム」「ソーセージ」などの食肉加工品メーカーというイメージがあるかと思いますが、グループ会社を含めれば食肉、加工食品、乳製品、水産品、健康食品などさまざまな食のフィールドにその事業領域は拡がっています。中でも、グループの年間売上約1兆2000億円の大半を占めるのは、実は牛、豚、鶏といった「お肉」で、国内の食肉販売量のシェア約20%を誇る主力事業となっています。
 
私自身は約3年前に、ニッポンハムグループの「Webコミュニケーション」を更に発展させるべく、システム部門を担当しているグループ会社から日本ハムへ、出向しました。出向当時は別の部署でしたが役割はそのままで、現在所属する「コーポレート・コミュニケーション推進室」において職務にあたっています。
当室は全社的なブランディングやマーケティング活動を推進しており、「Webコミュニケーション」のほか、グループ会社である「北海道日本ハムファイターズ」や「大阪サッカークラブ㈱」と連携したマーケティングやコミュニケーション活動や、毎年幕張メッセや京セラドームなどで開催する、ニッポンハムグループ展示会などの企画・運営を担当しています。
 
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日本ハム株式会社
コーポレート本部
コーポレート・コミュニケーション推進室
藤本芳人氏

 

編集部:Markezineさんの記事によるとオウンドメディアの前は「コーポレートサイトを中心とした運用」をされていたとのことですが、具体的にはどのような内容でしょうか?

 

「コーポレートサイト」には商品情報やレシピ、企業情報などさまざまなコンテンツがあります。各コンテンツにはそれぞれの担当部署がありますが、ちょうど私が出向する2年前に「コーポレートサイトリニューアルプロジェクト」があり、「Webガバナンス強化」という方針のもと、日本ハム株式会社として一貫性のある「Webコミュニケーション」を展開すべきということで、様々なルールを策定し、CMSが導入されました。
そのような中、出向当時の私は「ガイドラインや運用ルールの整備」、「コンテンツ担当者のフォロー」、「システム部門と連携した全体運用管理」などを行っていました。さらには「Webコミュニケーション」がより事業に貢献するにはどうすればよいのか、どのように社内外へ働きかけていけば良いのか、そのようなことについて日々活動をしていました。
 
参照:日本ハムのオウンドメディア「BBQ GO!」に学ぶ 成功したいなら「ユーザー視点でのPDCA」を回せ
 
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編集部:その後、「ユーザー行動観察調査」を行い、オウンドメディア構築の方針を決定されたと思うのですが、そもそも「なぜ」調査をしようと思われたのでしょうか?何か仮説をお持ちだったのでしょうか?

 

もともと、「コーポレートサイトリニューアルプロジェクト」の後に、効果検証をしようということでインターネットリサーチを定期的に行っていました。具体的にはコーポレートサイトを見た後の態度変容や印象変化などについての調査です。他には第三者機関が行っているユーザビリティ評価なども参考にし効果検証をしていました。
インターネットリサーチではコーポレートサイト閲覧後、信頼度や満足度があがるというポジティブな「効果」が数値として出ていたのですが、私自身には実感がなかったというのが正直なところです。はたしてほんとうに現状を評価できているのだろうかと疑問に感じていたところに、あるコンサルティング会社からユーザーの行動分析を元にしたコミュニケーション設計の提案をいただきました。一方的なコミュニケーションではなく、ユーザーの行動やニーズを掴んだうえで、それに基づくコミュニケーションをしようというアプローチですね。
 
まずはやってみようということで、約1年間さまざまな分析を行い、PDCAをまわしました。具体的にどういうことを行ったかというと、例えばキャンペーン応募者は他のキャンペーンにも興味があるだろう、という仮説を元に、キャンペーン応募後のサンクスページに別のキャンペーンを提案をする、といったような導線改善施策です。この場合は実際に応募数が約1.5倍に増えました。ペルソナに基づく仮説、仮説に基づく導線改善に成果が現れたことで、「ユーザーの行動分析に基づいたコミュニケーション」が有効であることを再認識しました。
 
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編集部:なるほど。行動分析によるPDCAをしっかりまわすことで、成果を出されたのですね。社内的にもコーポレートサイトの効果を感じはじめたということでしょうか?

 

もちろんキャンペーン応募数やキャンペーンを通じた企業/商品理解の促進など、キャンペーン担当者やWeb運用チームが追っているKPI上では効果が得られたとも言えますが、私自身はそれほど大きな効果を感じてはいませんでした。人によってさまざまな考え方があると思いますが、私は「効果があるか無いか」というのはKPIではなく、KGIで語るべきだと考えています。ECに連動しないコーポレートサイトにおいてのKGIの設定は難しいですが、KGIといっても売上貢献がすべてではありません。当時の私は、コーポレートサイトを利用するお客様、情報発信する各部署、営業/製造などの現場、そして経営など、関係する多くのステークホルダーから必要とされ、Webガバナンスがよく利いた、ニッポンハムグループのブランディング・マーケティングに明確に貢献する「Webコミュニケーション」に発展させることをKGIに設定し、活動を行っていました。
 
その観点から言うと、キャンペーン応募数を増やしたり、企業/商品理解を促進するコンテンツのユーザー接触回数を増やすだけで大きな効果に繋がったとは、とても思えませんでした。
ただし、ユーザーの行動分析が重要ということはわかったので、さらに踏み込んで実態を知るにはどうすればよいのか、ということを考えた結果、「ユーザー行動観察調査」というアプローチにたどり着きました

 
 

編集部:具体的にどのような「ユーザー行動観察調査」をされたのでしょうか?

 

設定したペルソナ(主に主婦層)に基づく約15名のモニターの方に、実際にいくつかのシナリオを元にコーポレートサイトを閲覧してもらい、その様子を鏡越しに見させていただきました。結果として、予想がついていたことも少なくありませんでしたが、想定外のこともかなり多かったです。特に印象に残っていることとして、ユーザーの滞在時間が短いことは認識していたつもりでしたが、実際に目の当たりにするとその操作スピードは想像をはるかに超えました。ほんとうに、キャンペーンを見るだけ、レシピをみるだけといった感じで、目的が決まっている人はほとんど寄り道しません。いろんなバナーや情報を付属的に掲載し、見てもらいたいコンテンツへ誘導したとしても、ほとんどの場合は少しの注意も払ってくれないんですね。
さらにモニタリング中にいただく、「企業サイトは自分には興味のない情報ばかり」といった多くの本音コメントも印象的でした。
モニターの方にとってみれば当社のコーポレートサイトは「自分ゴト」とは感じられにくいものだったんですね。
Webコミュニケーションを通じたブランディング・マーケティングが、どれだけ大変な仕事なのかということを改めて再認識しました。
そしてこの結果を受け、そもそもWebコミュニケーションを通じたブランディング・マーケティング活動をする上で、いろいろ制約も多く企業目線になりがちなコーポレートサイトは適した手段なのか、という疑問に至ったというわけです。
 
ユーザーとコーポレートサイトや当社のブランディング・マーケティング活動の大きなギャップ。遠くをゆくユーザーを振り向かせる工夫を追求するのか、それともブランディング・マーケティング活動がしやすいユーザーを探しに行くのか、私たちは後者を選ぶことにしました。それが「自分ゴトWebコミュニケーションへの転換」と私たちが言っていることで、企業目線での情報発信ではなく、消費者に寄り添った、自分ゴトを切り口としたコミュニケーションをしていこうという考え方です。
 
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編集部:「ブランディング・マーケティング活動がしやすいユーザーを探しに行く」という方針の転換イコール、「オウンドメデイア」となったのでしょうか?それとも他に選択肢があったのでしょうか?

 

「オウンドメディア」という選択肢は早くから浮かんでいました。というのも実は社内で先例があったんですね。
ニッポンハムグループは食品メーカーでは早く1996年ごろから「食物アレルギー」への取り組みを行っています。たとえば食物アレルギー対応食品の開発製造や、アレルゲン検出キットの開発などを行っています。その取り組みのひとつとして、2003年から運営している「食物アレルギーねっと」という食物アレルギー情報サイトがあります。まだ、「オウンドメディア」という言葉すら認知されていない時代ですね。そこでは食物アレルギー対応食(除去食)レシピなど、普段から「食物アレルギー」に関心のある方や、食物アレルギーにお悩みの方が必要とする情報を豊富に発信していますが、同時に多様なコンテンツを通してニッポンハムグループのことも深く理解していただいています。まさに「自分ゴト・コミュニケーション」を通じたブランディングです。
 
このような「自分ゴト・コミュニケーション」で、多数の方と交わる新たな手段とは何か?オウンドメディアだけではなく、ソーシャルメディアやペイドメディアの活用も検討しましたが、Makezineさんの記事にあるとおり入念な事前研究のすえ、最終的に「BBQをテーマとしたオウンドメディア」というプランに至りました。

 
 

編集部:すでに「自分ゴト・コミュニケーション」の土壌があったということですね。ありがとうございます。「BBQ GO!」について、今後の展望などありましたらお聞かせください。

 

いろいろありますが、ひとつキーワードを挙げるとすれば「リアルとの連動」です。たとえば流通店舗のBBQ食材の売場やBBQスポットとの連動です。すでに「BBQ GO!」のコンテンツを活用した販促POP作りや売場作りの事例も拡がっており、食材を販売するあるBBQスポットではほとんどの商品がニッポンハムグループに切り替わったという事例も出ています。このようにWebサイトだけにとどまらず、社内外を大きく巻き込んだ活動に広げ、大きな成果に繋げていきたいと考えています。

 
 

編集部:最後に、皆さんにお聞きしているのですが、藤本様にとって「調査」とは?

 
私の職務においては主に「仮説を導き出すためのヒント探し」でしょうか。調査結果をゴールとは思わないようにと考えています。もう少し違う言い方をすると、KPI主義に寄らないということです。KPIを重視しすぎてしまうとそれが一人歩きし、目的化してしまいます。
特に今回のような経験則が通用しないイノベーションの取り組みでは、「リーンスタートアップ」のように、臨機応変に小さく高速PDCAを回していくことが求められます。手段・プロセスは仮説に過ぎず、修正・改善・大胆なピボット(方針転換)も当たり前のことです。そんな中でKPIにとらわれるのはナンセンスと言えるでしょう。
KPIに基づく中間調査結果に一喜一憂するのではなく、狭い視野ではなく広い視野でもって、「KGI」達成のためにどうすればよいのか、常に仮説を更新し、PDCAを回し続けることが大切だと考えています。

 

 
編集後記:
「ユーザー行動観察調査」による実態の把握、そしてもともと存在した「食物アレルギーねっと」というコミュニケーションの土壌、そして緻密な戦略設計、それらひとつひとつが、「BBQ GO!」というオウンドメディアが日本一のBBQメディアになった要因のひとつだと思う。ただ、私が何よりも強く共感したのは「効果があるか無いかというのはKPIではなく、KGIで語るべき」という、藤本氏の「効果」に対する捉え方だ。それが、疑問と仮説を生み、「ユーザー行動観察調査」にたどり着いたのだろう。WebのKPI達成だけで満足していては、決してこの道は開けなかっただろうと感じた。

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